「人生100年時代」と言われる今、社会人の「勉強」の重要性はこれまで以上に高まっています。
しかし仕事で忙しいビジネスパーソンたちは、なかなか勉強の時間がとれませんよね。限られた時間で勉強するとなれば、いかに効果的な学習の方法を身につけるかが重要となります。
だからこそ、科学的根拠のある効果的な「学び方」について教えてくれる本書『Learn Better』は、すべてのビジネスパーソンが読むべき一冊と言えます。
とはいえハードカバーで大ボリュームの本書を読み切るのは、なかなか骨の折れる仕事でしょう。この記事では、本書の要点をまとめてご紹介します。
子どもの頃に学習困難を抱えていた著者が、多くの実証研究調査と専門家への取材を通してたどり着いた、ホンモノの学習法とは何なのでしょうか。
みんな「学習の仕方」を知らない
新しい知識やスキルを習得するときに「どんな方法がベストか?」という発想をする人は少ないと著者はいいます。
たとえば資料を繰り返し読む人は多いと思いますが、これは学習のアプローチとしては効果がないと言われています。また蛍光ペンを使う人も多いですが、この効果も研究による裏づけはごく限られているそうです。
エビデンスがない学習法の効果を信じて取り入れている人が多い一方、自分のスキルの振り返りや進捗度の追跡をすることは、学習アプローチとしての有効性を裏づけるエビデンスが山ほどあるのに、それを実践する人は少ないといわれています。
ある分野やテーマの専門知識を深めるためにはどうすればよいか、私たちはわかっていないのです。
では、どんな学習方法が有効なのでしょうか。
効果的な学習法とは?
効果的な学習法について、ダーツの練習に関する興味深い実験結果があります。
ニューヨーク市内の女子校で、ダーツの遊び方を初めて教わるとき、どのような方法が最も有効なのかを測る実験が行われました。研究を実施した心理学者は、女子生徒たちを次の3つのグループ分けました。
- 「チーム・結果がすべて」
- 「チーム・学習メソッド」
- 「チーム・一般常識」
1つ目「チーム結果がすべて」は、ボードのできるだけ中心を狙ってダーツを投げるよう指示されました。つまり点数を獲得しさえすれば勝てるという教え方です。
2つ目の「チーム・学習メソッド」には、ダーツの技術を身につけるプロセスに集中させました。女性生徒たちはまず、ダーツの正しい投げ方に取り組み、「腕を体から離さない」などの基本をマスターします。そしてある程度うまくなったら、的を狙って投げてごらんと促されます。プロセス目標から的に当てるという成果目標へと、時間をかけて移行していきました。
3つ目の「チーム・一般常識」には、ただ「ベストを尽くせ」とだけ指示しました。つまりこのグループがどんなやり方でダーツの遊び方を覚えるかは、本人たちに任されたのです。
さて、どのグループが最もよい成績を残したのでしょうか? 実験が終わってみれば、2つ目の「チーム・学習メソッド」の成績は軍を抜いており、「チーム・一般常識」の倍近い点数をたたき出していました。しかも彼女たちは実験をはるかに楽しんでおり、実験が終わってからも「ダーツをもっと教えて」とせがんできたそうです。
この実験からわかったことは、学習とは1つのことへの「集中」と「計画性」と「内省」をともなう体系的なメソッドであるということです。ある最近の分析では、分野を問わず、学習メソッドが成果を大きく左右することが示されています。あらゆるものにおいて、学習プロセスに力を注いだ方が、成果が高くなることがわかっているのです。
効果的な学習6つのプロセス
本書では、効果的な学習プロセスとして、以下の6つが推奨されています。
- 価値を見出す(Value)
- 目標を決める(Target)
- 能力を伸ばす(Develop)
- 発展させる(Extend)
- 関係づける(Relate)
- 再考する(Rethink)
各プロセスでは、適切な目標の定め方や、フィードバックの重要性、知識の領域を広げ、理解を深化させるための学習法など、具体的なノウハウが科学的根拠とともに記させれています。
もちろん、すべての学習について上記の段階的なアプローチをとる必要があるわけではありません。知識を深める価値のあるスキル、つまり習熟する価値のあるスキルに対しては、上記のような体系的なアプローチをとるのが効果的だということです。
詳細は本書を確認いただくとして、ここではすべての学習プロセスに通じる5つのポイントをご紹介します。
効果的な学習メソッド5つのポイント
①脳に積極的に関与する。
学習とは頭を働かせる「活動」という面が強く、積極的に関与するほど学びも深まります。そのため新しいテキストを読んでいるときは、「このテキストは何についてのものか?」「筆者が伝えたいポイントはなにか?」「わかりにくいと思われるところはあるか?」のように自分に問いかけることが有効だといいます。
②学習を管理する。
学習を管理することも必要です。フィードバックをもらったり、自分のパフォーマンスをベンチマークしたり、重要とはわかっていてもできていない人がほとんどではないでしょうか。
たとえばスピーチをするなら自分の動画を撮って振り返り、文章を書いたら友達に読んでもらい、語学を学んでいるならネイティブと会話をするといったことです。「美女読書」編集室で添削を受けることもフィードバックの1つであり、文章力を伸ばす効果的な学習方法だと言えます。
③自分の思考に思いを巡らせる。
本当に理解しているか、「忘れること」について手を打っているかなど、自分の思考について思いを巡らせることも必要です。学んだ内容のおよそ半分は一時間後には忘れてしまうという推計があるため、数日後、数週間後、数ヶ月経ってからでも、学んだことの振り返りを必ずするべきだと言います。
たとえばフラッシュカード(質問を書いたカードの束を用意しておき、見て答える練習を繰り返すことで、記憶を強化する)の量を増やし、時間をおいて学習を繰り返す機会を増やすだけで、成果が30%向上する可能性があると言われています。
④感情が果たす役割を理解する。
意外と見落とされがちですが、感情が果たす役割も大きいそうです。学習は純粋に理性的なもの、深い論理と研ぎ澄まされた推論思考の世界だと考えがちだが、私たちの脳はそのようには働きません。
たとえば「自分にはできる」と思わなければ学習はできません。脳が高度な活動をするためには、理性と感情の両方を必要とするのです。
⑤「関係」を見いだす。
専門知識を習得するには、関係を見いだす必要もあります。効果的な学習とは、要するに知識の総体の中の相互関係をつかむこと。だから「この概念を説明するのに役立つ類似の例はないか」「他の分野やテーマとの関連性はないか」と自問することが重要なのだそうです。
現代において最も重要な能力とは?
検索すれば即座に答えが出てくるデジタル時代において、事実情報の価値は激減しています。
成功するには単純な手順やノウハウを身につけるだけでは不十分であり、「学び方」を知り、思考のスキルを身につけることが重要になっているのです。
学習の方法を学ぶことは「究極のサバイバルツール」、現代において最も重要な能力の一つであり、あらゆるスキルの前提となるスキルであると著者はいいます。なぜなら学習の方法さえ覚えれば、ほとんど何でも学ぶことができるからです。
問題解決という真に重要なスキルを育てるために、情報と知識を活用するための学習の方法を本書から学びましょう。
モデルプロフィール
- 名前 :中塚美緒
- 生年月日 :1998.6.12
- 出身 :東京都
- Twitter :@miss3_chuo2018
- Instagram :@miss3_chuo2018
ご協力いただいたお店
- 店名:「café 1886 at Bosch」
- 住所:東京都渋谷区渋谷3-6-7
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【土日祝】11:00〜20:00 - 定休日:施設の休みに準ずる
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