東大教養学部「考える力」の教室〜新しいアイデアを生む「リボン思考」とは?

東大教養学部「考える力」の教室〜新しいアイデアを生む「リボン思考」とは?



 こんにちは。原稿を提出すると、「ありきたりな文章」というダメ出しをもらうことが多い宮本真知です。

 最近、「コンピュータが人間の仕事を奪う」とよく耳にしますよね。「消える仕事」のラインナップに並ぶのは、レジ係や簿記会計職、電話のオペレーターなど様々です。(参照:オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」

 これから先、生き残るためには、人間にしかできない「クリエイティブ力」「発想力」を武器にして、新しいモノを生み出していかなければなりません。

 そこで必要なのが、社会に出るとかならず行き当たる「答えのない問い」に対し、新しいモノを生み出していくための、「考える力」を鍛えることです。今回ご紹介する『東大教養学部「考える力」の教室』は、未知の世界を生きていく上で必要な「考える力」を伸ばしてくれる一冊です。

 著者は博報堂のブランド・イノベーションデザイン局長であり、東京大学教養教育高度化機構の特任教授でもある宮澤正憲さん。本書は、東大生たちから「社会に出てから、一番役に立った!」という声が多数寄せられるほどの人気授業を書籍化したものです。

 宮澤さんは、新しいことを考えるためのフレームワークとして、「インプット」「コンセプト」「アウトプット」の3ステップから構成される「リボン思考」を提唱しています。

 新しいことを考えるためには、まず、広く、深く、たくさんの素材を集める(=インプットする)ことが大切で、そこから「コンセプト」によって徐々に絞り込んでいき、最後にアイデアを拡散させる、というのがリボン思考の考え方です。

 下の図を見ていただくと、そのイメージがつかめるでしょう。

 入り口と出口は幅が広く、アイデアの「量」が重視されており、その中心を「コンセプト」でギュッと絞っていることがわかります。

 リボン思考の3ステップについて、簡単にご説明します。

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1. よい素材を集める「インプット」

 インプットは、料理に例えるなら「素材」です。よい素材が集められれば、調理や演出にあまり手をかけなくても仕上がりはよくなります。だからこそ、型にはまった情報収集ではなく、「クリエイティブ」に集めることが大切です。

 クリエイティブなインプットとは、「そもそも何を調べるか?」について発想し、「どうやって調べるか?」を創造するということです。これら2つにはいくつもの選択肢があるにも関わらず、これまで深く掘り下げて考えたことがない人が多いのではないでしょうか。

 本書では、「京王井の頭線の新しいサービスを考えてプレゼンしよう」というテーマに取り組んだ授業を例に挙げています。

 Aチームは、「井の頭線の車両の中で使いにくいところを探してみたら、何か発見があるんじゃないか?」という問いを設定し、実際に井の頭線に乗車して不便なところを探すという方法を採用。調査をもとに「井の頭線の使い勝手をよくする提案」をしました。

 一方、Bチームは、すぐに井の頭線を調査せずに、「そもそも新しい鉄道のサービスを考える時に、その鉄道に乗って考えていいのだろうか」という問いからスタートしました。その問いは「井の頭線は、鉄道以外で何か似ているものはないだろうか」という新たな問いに発展。渋谷と吉祥寺という若者に人気の2つの街を結んでいながら、他の路線のように相互乗り換えなどもなく、渋谷も吉祥寺も完全に終点となっている井の頭線は、表玄関と裏玄関があって賑わっているショッピングモールに似ているという結論に至りました。

 そして鉄道の調査ではなく、ショッピングモールの観察を行って、「井の頭線を1つの “ショッピングモール” として楽しめたら面白い」という企画を出してきたのです。

 Bチームが面白いアウトプットを導くことができたのは、「面白い問いを立てて、面白いインプットをした」からです。従来とは視点を変え、「何を調べるか?」「どう調べるか?」をクリエイティブにしたことで、面白いアウトプットにつながったのです。

 この例からわかるのは、ユニークな問いはユニークな答えを導き出し、凡庸な「問い」からは、凡庸な発見しか生まれないということです。

 今までの自分たちのやり方を疑い、調査方法を「発見」するつもりで臨むこと、また情報のクオリティを高めるために、「インプット手法の創造性を重視すること」が大切です。



2. インプットをクリエイティブに調理する
「コンセプト」

 コンセプトとは、「ひとことで言うと何なのか?」を定義することであり、料理にたとえるならば「調理」にあたります。

 集めた素材をどう調理するか? を考え、実際に書いたり、手を動かしたりしながら決めていきます。コンセプトがユニークで明確であるほど、競合との差別化が可能となります。

 コンセプトがないと、課題に1対1に対応した解決を図ろうとしてしまい、当然、競合他社も同じ課題を持っているため、結果として、似たアイデアになってしまいがちです。一方、コンセプトが差別化できていれば、最終的なアウトプットが同質化することは少なくなります。

 優れたコンセプトとは、3つの「K」を兼ね備えたものだといいます。3Kとは、

  • 「共有力」…いいたいことがわかりやすく明確であること。向かうべき方向や最終ゴール像がイメージしやすく、記憶に残りやすい。関係者で共有できる力をもっている。
  • 「期待力」…関係者や生活者にとってコンセプト自体にちょっとした驚きや、ワクワクを期待させる力がある。
  • 「起点力」…活動やアイデアの起点になっている。コンセプトを聞いただけで商品・サービス・コミュニケーションなど、さまざまな領域のアイデアがどんどん湧いてくる力がある。

 リボンの真ん中でキュッと絞られている「コンセプト」は、大量にインプットしたアイデアを集約する行為であり、アイデアの同質化を起こさないために大切なステップなのです。

3. コンセプトを広げて飛躍させる
「アウトプット」

 アウトプットは、料理に例えるならば最後の演出、つまり盛り付けにあたります。インプット(素材集め)とコンセプト(調理)により出来上がりつつある料理を、最終的な形へと仕上げていくステップです。

 アウトプットのプロセスでは、「広げて具体化する」という作業を行います。コンセプトを軸にして、一気に発想を広げていきます。その際、単に広げるだけではなく、考えをもう一段ジャンプさせることが重要です。

 そのためには、コンセプトを土台として、とにかく大量のアウトプット案を出すことが成功の鍵です。量を出すために心がけておきたい基本のルールが以下の5つです。

①批判してはならない

 アイデアがすべて出尽くすまで、どんなアイデアであっても善し悪しの評価を下してはならない。

②自由奔放を歓迎せよ

 制約やタブーを排除する。途方もないアイデアをよしとする。その時点では、実現不可能なことも、他のアイデアと組み合わせることで実現可能になることもある。

③質より量

 アイデアが多ければ多いほど、最善のアイデアが見つかる可能性が高まる。「千三つ」の言葉どおり「1000個のアイデアのうち面白いのは3個程度」と心得る。

④アイデアに便乗性、結合せよ

 アイデアと個人を紐づけしない。発信者の役職や年齢に、アイデアの価値が左右されてはいけない。全てのアイデアは、個人のものではなく、チームのものであり、「場」が生み出したアイデアである。カンニング推奨。他人のアイデアに積極的に便乗し、結合し、発展させよ。

⑤アイデアの出やすい場をつくれ

 飲食禁止のもと、かしこまった服を着て、創造的なアイデアを考えよ! というのは難しいもの。新しく、自由な発想は環境を整えることで生まれる。

 これらのルールのもと、ブレインストーミングなどを行って、大量のアイデアを出すことを勧めています。

 また実際にやってみることで、新たな発見を得ることもできます。考えたアイデアを積極的に手を動かして形にしてみることで、新しいアイデアや素晴らしいアウトプットのヒントになるのです。実物大の模型を作ってみたり、それを使っているシーンを漫画にしてみたりという方法が紹介されています。

 「考えることを考える力」というのは、一生モノのスキルとなります。すぐに身につくものではないかもしれませんが、私も「まずはググる」から脱却して、クリエイティブなインプットから始めてみたいと思います。

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執筆者プロフィール

宮本真知
アラサー一児の母。事務職、占い師を経て、ライターの道へ。
不思議なことが大好きで、占いやおまじないを中心に執筆しております。
また、生まれて以来の本好き。尊敬する作家は、安部公房、レイブラッドベリ、町田康。
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