明石ガクト『動画2.0』これからの動画ビジネスを成功させる要因とは?

明石ガクト『動画2.0』これからの動画ビジネスを成功させる要因とは?




 こんにちは、吉野善太です。

 今回は、『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』を読みました。

 著者の明石ガクトさんは、ミレニアル世代をターゲットに動画で「世界観が変わる体験」を提供するクリエイティブ企業「ONE MEDIA」の代表取締役です。

 NewsPicksの「動画をアップデートせよ」という番組で明石さんのことを知り、動画コンテンツが今後どのように進化していくかを学びたいと思って、この本を読んでみました。

 本書は、動画をテーマに、過去から未来への動画の変化の歴史や、これからの動画に求められること、動画ビジネスを成功させるためノウハウなどについて書かれています。

 私が面白いと思ったのは次の2点です。

  1. YouTube誕生以降の動画の変化
  2. 動画に求める「時間あたり情報量(IPT)」の世代差

 どちらも「これからの動画ビジネスを成功させる要因」に関わるポイントのため、この記事ではこれら2つに焦点を当ててご紹介します。

「エンゲージメント」がある動画とは?

 現在1日におよそ10億時間も視聴されているYouTubeが誕生してから、現在若者の間でブームになっているTikTokやIGTVなどのサービスに行き着くまでを、明石さんは以下の3つの流行に分けることができるとしています。

YouTube誕生以降の流行の変化

  • ファーストウェーブ
  • 2005年 YouTube誕生
     ↓
    2014年 YouTubeブーム

  • セカンドウェーブ
  • 2015年 Facebookが動画対応
     ↓
    2017年 早回し料理動画

  • サードウェーブ
  • 2018年 Facebookアルゴリズム変更宣言
     ↓
    20xx年 IGTV、 TikTokなど新しいプラットフォームがブーム

 「ファーストウェーブ」では、Youtubeが主戦場です。誰もがコンテンツを発信、視聴できるようになり、多くのYoutuberが登場しました。「このYouTuberの動画が観たい」という確固たる目的があって動画を観に行くのが特徴で、Youtubeは巨大な動画の検索エンジンとなります。

 「セカンドウェーブ」では、検索を介さずに、ユーザーがそれぞれのフィードに流れてくるコンテンツに偶然に出会うというのが特徴で、Facebookをプラットフォームに「料理の早回し動画」などが大流行しました。

 検索には目的が必要なので、そもそも観たいと思う動画や人がいないと成り立ちません。一方、フェイスブックのフィードは誰もがちょっとした時間を埋めるために1日に何度もフィードを開くので、毎日ものすごいスピードでコンテンツが消費されていきます。そうした中で存在感を出すためには、1日1本の動画では足らず、大量の動画コンテンツが必要とされました。

 そこでセカンドウェーブでは、新規参入の動画系スタートアップを中心に「仕組み化による大量生産」が行われます。料理の早回し動画のメソッドを、メイク動画やヘアアレンジ動画、DIY動画など、様々なハウツー動画に展開し、Facebook上には似たような動画が大量に溢れました。

 しかし2018年1月、マークザッカバーグがFacebookのアルゴリズムを変えると宣言。この方針変更によって、セカンドウェーブの動画はリーチが一気に減り始めます。これはFacebookによる「本物を残しますよ」というメッセージであると明石さんは指摘します。

 アルゴリズム変更の際に、マーク・ザッカーバーグは「会話を生むこと」が最も重要ということを書いており、このことからプラットフォーム側は、「人と人とのコミュニケーションの間で、そのコンテンツが有益なものになっているかどうか」を重視しようとしていることがわかります。

 そのため「サードウェーブ」では、ただひたすらに再生回数を稼ぐような動画ではなく、観た人が他の人に「この動画よかったよ」とコメントしたり、シェアしたり、いいね! したりするようなコンテンツが求められている、と明石さんは結論づけています。

 これからは、高品質であることは当然として、「動画コンテンツにする意味や価値があるのか」「エンゲージメントがある動画なのか」ということが問われるようになるということです。

 この変化のおかげで、動画クリエイターは自分のメディアやブランド、クライアントにとって価値の高い動画を制作するようになり、視聴者側は、自分の趣向に合う有益な動画を視聴することができるようになります。

「IPT」の濃い動画とは?

 もう一つ興味深かったのは、「映像」と「動画」の違いに関する考察です。

 明石さんはこれらの違いを「Information Per Time=IPT」、つまり「時間に対する情報量の濃さ」という尺度を使って説明しています。

 結論からいうと「動画」の方がIPTが高く、短い時間にたくさんの情報量が詰まっています。「動画」というのは「情報の凝縮がある映像コンテンツ」なのです。

 人気Youtuberの「動画」を観ると、ジャンプカットで会話の間を極端に削ぎ落とすことで、情報を凝縮させていることがよくわかります。これはYoutubeの動画は、主にスマホでスキマ時間に観られることが想定されており、短い時間でたくさんの情報量を得られるようにしているためです。スキマ時間に見られるSNS上で、早回し系のハウツー動画が流行したのも同様の理由です。

 一方、テレビ番組や映画のような「映像」は、大きな画面で、30分〜2時間という時間をそのコンテンツを観ることに費やすことを前提にしています。たとえばあと5分で家を出ないといけないタイミングで「情熱大陸」を観る人はいないでしょう。大きい画面で時間をかけて観ることが前提の「映像」コンテンツは、スキマ時間には楽しめないのです。

 そしてIPTの濃いコンテンツに慣れているYoutuberのファン、特に小・中学生は、テレビ番組を見ると、会話の間やCMまたぎで同じことを繰り返すこと、タイミングを逃すと最初から見られないことなどIPTの薄いコンテンツが我慢ならず、「かったるい」という感想になるわけです。

 一方、テレビのメイン視聴者である40代以上はIPTが濃いコンテンツについていけません。テレビ番組は視聴率がKPIであるため、この世代を無視することはできず、テレビはどんどん若年層から離れたものになっていくと明石さんは分析しています。

 そしてスマホ全盛期の現在から、今後数年で到達するであろう5G・8K時代では、IPTが高いコンテンツが求められ、映像と動画のバランスが逆転すると言われています。明石さんはこれを「動画産業革命」と呼んでおり、だからこそ、これからの「動画」ビジネスの重要性を強く主張しているのです。

 本書は、今後数年以内に起こる「動画産業革命」に向けて、若いクリエイターたちの心を熱くさせ、立ち上がらせる力を持った一冊です。

 現在、動画や映像制作に携わっている人はもちろん、今後これらの分野で仕事をしたいと考えている人は、ぜひ読んでみてください。

執筆者プロフィール

吉野善太
23歳 大学院生
趣味:読書・芸術・アート・歴史・食事・美術館・アニメ・漫画・お笑い・芸人・ラジオ・TVなど
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