突然ですが、皆さんは、スウェーデンという国に対してどのようなイメージを抱いていますか?
- 幸福度が高い
- 家族を大切にする
- IKEAなどの北欧家具
- 高い税金を負担する分、社会福祉が充実している
- 男女ともに働いている(女性の社会参画が進んでいる)
などが、私がスウェーデンという国名を聞いて思い浮かべたものです。
2017年、国連発表の「世界幸福度報告書」では10位にランクインしており、「幸せな国」というイメージを持たれる方も多いと思います。
そんな「幸せの国」スウェーデンでは、国民の4人に3人が、家族もしくは自分自身に心の病を経験したことがあるそうです。また病気休暇を取得する理由も、最も多いのが心の病であると言われています。
本書『北欧スウェーデン式自分を大切にする生き方』の著者、マッツ・ビルマーク、スーサン・ビルマークも、心の病から脱却した経験のある夫婦です。
マッツは、社交的な態度の裏に、自分に全く自信が持てない不安症を抱えており、妻のスーサンは、他人に嫌われるのが怖くてNOと言えず、神経衰弱に陥ったことがあるそうです。
かつて夫婦で不安症や神経衰弱を克服した経験をもとにして書かれているため、内容に説得力があり、実践しやすいヒントもふんだんに盛り込まれています。
ストレス社会・日本に生きる私たちにとって、読んで必ず得るものがある一冊です。
気付けば、過去や未来のことで頭を悩ませている私たち。あなたも「たら」「れば」ばかり考えてしまったことはありませんか。
- もっと痩せていれば
- もっと背が高ければ
- あの時、XX大学に入っていれば
- もっとお金持ちだったら
- 昨日、あんなにお酒を飲まなければ
- あの時、あの人と結婚していたら
- あの会社に転職していたら
- もっと、子供が言うことを聞いてくれたら
私にも、思い当たる節がたくさんあります。
「今日、会社であんなこと言わなければよかった…」とか、「もっと給与のいい会社に就職してればなぁ…」とか、考え始めるとキリがありません。極度の心配性なのでしょうか、その日の出来事を後悔して、眠れなかった夜さえあります。
私たちは、考えごとで常に頭の中をいっぱいにしており、それがストレスや自信のなさにつながっているケースは少なくない、と著者は指摘します。いわば人間の最大の強みであるはずの思考が、気付けば「雑音」と化し、私たちの精神状態に影響を来してしまっているのです。
また過去の自分の選択を後悔したり、もっともっと、と追い続けたりするのは、今に不満を持っているからだ、とも言います。
脳内の「雑音」を少しでも減らして、ストレスを軽減させるにはどのようにすれば良いのでしょうか。
「今、ここ」を意識する
私は海が好きです。海辺で、波の音をBGMに愛犬を撫でながら心からリラックスしている時間、「ああ、なんて幸せなのだろう」と思います。
あなたにも、そんな経験はないでしょうか。
その瞬間こそが、今を生き、人生を楽しんでいるときです。
インターネットで瞬時に世界にアクセスでき、欲しいものは指の操作一つで買えてしまう時代ーー私たちは「今、ここ」を意識することが大変難しい時代を生きています。
脳内の「雑音」は、「これさえ手に入れば幸せになれるはず」と、今ではなく未来に、幸せを求めてしまうからです。
「今、ここ」を意識することで、過去や未来の心配事による雑音を静かにすることができます。雑音が静まれば、ストレスのもとを減らすことにつながり、心の平穏を手に入れることができると本書は説きます。
しかし「今、ここ」を意識するのは結構難しいものです。
私も、この文章を書いている最中に、「明日は何時に会社に行って、あの資料を作らなきゃ」と未来のことを考えてしまっていました。
本書では、「今、ここ」を意識するための有用なエクササイズがいくつも紹介されています。2つほど、一緒に試してみましょう。
【実践】「今、ここ」に集中する方法
①いまの自分に集中する
今、あなたは何をしていますか? 電車に揺られながらスマホでこの書評を読んでくれていますか? はたまた机に向かって、受験勉強の合間にこの書評を読んでくれているのでしょうか。
私は、自宅のPCでこの書評を書いています。向かって左には、本書とノート、ペン、付箋が置いてあります。時折、用意したお茶を飲んでいます。日に日に寒くなり、今もPCを打つ指先が少し寒いな、と感じています。「今」の状況に集中することで、明日の会議の心配事は思考からどこかに消えたことに気がつきました。
このように、今あなたが行なっていることを、詳しく具体的に、声に出して、あるいは心の中で言ってみましょう。その際、評価に基づく言葉(例えば、いい、むかつく、嫌い、不快、素敵など)は使わないようにしてください。
このように、「今ここで何が起きているのか」に全神経を集中させることで「今、ここ」を意識することが容易になります。
最初は、この状態を長く保つことは難しく感じると思いますので、まずは1日1回、慣れてきたら数回に増やしてみましょう。
②呼吸に集中する
今から行う5回の呼吸に集中してみましょう。「私は息を吸っている」「私は息を吐いている」と呼吸するたびに心の中でつぶやいてみます。
「吸って吐いて」と唱えながら呼吸をすることで、脳内で心配事を考えてしまうのを防ぎます。これは意識するたびに効果のあるエクササイズだそうですので、気がついたタイミングでやってみてください。
私も実際にやってみたところ、やる前よりも思考がクリアになったように感じます。
自分を大切にする=「今、ここ」を意識する
本書を読み始める前は「『幸せの国』スウェーデンで、いかにして人々が幸せな人生を実現しているかを紹介した本」だと思っていました。
しかし予想に反して、スウェーデンは、国民の多くが心の病を経験したことのある国で、本書はそうした実体験から学んだ「今、ここ」を意識して生きるための実践的なヒントが詰まった一冊でした。
「幸せの国」スウェーデンは、国民それぞれが「今、ここ」を意識して生きることによって出来上がったのでしょう。
現代を生きる私たちは、絶えず大量の情報にさらされ、無意識のうちに自分をストレス環境に置いてしまうことが少なくありません。一度、本書にある内容を実践し、今を生きることの大切さに目を向けてみてはいかがでしょうか。