みなさんは街へ買い物に出かけて、買うつもりのないものを思わず買ってしまった経験はありませんか?
「以前から欲しくて安くなっていたから」「前から興味があったから」「広告に惹かれたから」など、人によってその理由は様々だと思います。
普段、私たちの周りにはたくさんのモノ(商品)があふれ、様々なメディアからの膨大な情報にさらされています。
イギリス情報通信長のレポートによると、人が1日にメディアに接している時間は、ネットを含むすべてのメディアを合わせて平均8時間41分だそうです。1日の3分の1以上が情報にさらされているなかで、私たちは取捨選択し、行動を起こしています。
では、そうしたなかで私たちの注意や関心を引く情報とはどのようなものなのでしょうか。また情報を発信する立場から考えた場合、うまく消費者に情報を届け、行動を促すためにはどうすればいいのでしょうか。
今回ご紹介するパトリック・ファーガン著の『#HOOKED 消費者心理学者が解き明かす「つい、買ってしまった。」の裏にあるマーケティングの技術』には、人の注意や関心を引き、記憶にがっちりと食い込ませる、「HOOK」となるメッセージの法則について、人間の脳の働きに注目しつつ、大きく3つのSTEPに分けて紹介しています。
この記事でも、人間の脳の性質と3つのSTEPについて紹介させていただきます。
脳に注意・関心を向けてもらうには?
人間の脳には、意識的にはたらく部分と無意識的にはたらく部分があります。
本書によると、情報への注意・関心と意思決定については、意識下で生じるものではなく、無意識下に生じるものなのだそうです。なぜなら、人間が意識的に情報を処理するキャパシティには限りがあり、あふれかえる情報をすべて意識的に処理することはできないからです。
このことは調査でも実証されており、普段の私たちの生活を考えてみても、ほとんど処理せずに放置して過ごしている情報がたくさんあることに気づくと思います。
そうしたなかで脳に注意・関心を向けてもらうためには、その情報が「自分にとって重要だ」と思わせるメッセージでなければなりません。
以下、「気づかせる」「考えさせる」「行動させる」という3つのSTEPにわけて、相手の注意・関心を引きつけるための「HOOK」をご紹介します。
「STEP1 気づかせる
まずは自分たちのメッセージに「気づかせる」ために、次のような「HOOK」が挙げられています。
- 簡単に理解できる
- 感情をわしづかみにする
- 馴染みがある
- サプライズを駆使する
皆さんも難解な文章を見て、思わず読む気をなくしてしまった経験があると思います。相手に気づいてもらうためには、できる限り単純明快なメッセージにした方がよいのです。
「感情をわしづかみにする」というのは、楽しい・わくわくと言ったプラスの感情だけでなく、不安・恐怖と言ったマイナスの感情も含まれます。プラスであれマイナスであれ、感情を揺さぶるメッセージには相手の注意や関心を引く効果があるのです。
また「馴染みがある」メッセージは「じぶんごと」として気づいてもらいやすく、「サプライズを駆使する」ことによって相手の注意を引くことができます。
STEP2 考えさせる
相手に「気づかせる」ことができたら、次はそのメッセージについて「考えさせる」ステップです。
たとえば受け手の好奇心をかきたてる「ミステリー要素」を加えたり、メッセージに画像を使うことでよりシンプルかつ具体的にしたり、また「ストーリー性」をもたせることで理解を促したりと、さまざまな方法が紹介されています。これらはどれも「考えさせる」ことで記憶に残りやすくすることを狙っています。
記憶に強く残っていた方が、何かのきっかけで行動してもらえる可能性は高くなるのは当然ですよね。
STEP3 行動させる
最後のステップは「行動させる」こと。考えさせ、記憶に残させた結果、具体的な行動に移させることができたとしたら、そのメッセージには影響力があったと言えます。
本書では、行動に移させるための3つの「HOOK」として、
- 「記憶」
- 「ヒューリスティック」
- 「プライミング効果」
が挙げられています。
上述の通り、メッセージが「記憶」に残っているほど、行動に影響を及ぼす可能性は高くなります。しかしメッセージを読んでから行動を起こすまでには、長いタイムラグがある。だからしっかり「記憶」させる必要があるのです。そのカギは「反復」することであり、メッセージを繰り返し伝えることで、相手の頭のなかに強く刻み込むことができるのです。
2つ目の「ヒューリスティックス」とは、経験や勘を根拠として短絡的に思考することです。人は何からの決断をする際に、ヒューリスティックを活用して思考をショートカットしています。この性質を利用したメッセージを送れば、直感的な判断による行動を喚起することができます。
3つ目の「プライミング効果」とは、「先行刺激」(プライム)によって判断が影響を受ける現象のことです。言葉、文章、画像などを巧みに配置することで先行刺激を与え、関連する発想や、感情や、行動を思い浮かべさせれば、それによって受け手の行動が変えることができます。
メッセージを伝えるために必要なこと
以上、3つのSTEPについて簡単に紹介させていただきました。
本書では、様々な実験の結果や事例を踏まえた上で、メッセージを相手に気づかせ、考えさせ、行動に移させるための「HOOK」が解説されています。細部まで読み込むことでさらに理解が深まり、どのようなメッセージであれば受け手に届くのか、届いた後の思考や行動へ影響を与えるためにはどうすればいいのかについて知ることができるでしょう。
日常生活において、私たちは様々な人とコミュニケーションをとり、情報を発信したり、受け取ったりしています。相手に注意・関心を持ってもらうためにも、まずは本書を読んで3つのSTEPを理解することから始めてみてください。そうすれば、人の記憶に留まるようなメッセージを仕掛けられるようになるはずです。