机の上は汚れててOK!創造力には整然性よりも自律性が大切である理由

机の上は汚れててOK!創造力には整然性よりも自律性が大切である理由




できる人の机は汚い?

 オフィスの机の上には山積みの資料。帰宅すれば床の上には洗濯物。明日の朝は大事な会議。睡眠も大事だが、仕事は終わってないし、お風呂にも入らなければ——ああ、何からとりかかろう?

 とりあえずシャワーを浴びて、翌日のプレゼンのスライドについて考える。「あのページと次のページを入れ替えた方がよいかもしれないな…」

 風呂から出ると、積み上げた洗濯物の山からタオルを取り出し、資料の山を押しのけノートパソコンを開く。人に見せられるような部屋ではないが、手に取るようにわかる。そう、私にとっては散らかってはいないのだ——。

 はじめまして。片付けの苦手なO.T.です。

 手帳のスケジュール、メールボックス、引き出しの中——もっと綺麗だったらよいのに、と思う反面、片付けようにもなかなかうまくいかないことが多々あります。

 実際、思い切って片付けてみても、数日経てばどこにしまったのかわからなくなり、余計に時間がかかってしまう。そんな状況とはもうおさらばしたい、そう思って手に取ったのが『ひらめきを生み出すカオスの法則』です。

 本書では、「無秩序がもたらす創造性」について様々な事例とともに語られており、「できる人の机は汚い」とまで述べています。そう、もう片付ける必要はないのです。

「好きなように空間を使える」ことが重要

 特に目が引かれたのは、第3章に登場する職場環境に関するエピソードです。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)といえば、創造的な活動が常に行われている場所というイメージがあります。かつて、そこには「ビルディング20」と呼ばれる建物がありました。

 戦争中、1943年に極秘プロジェクトを実施するための場所として急設されたその建物は、殺風景で、快適ではなく、お世辞にも視覚デザイン的によい建物ではありませんでした。しかし終戦までの2年間、ビルディング20では、膨大な人数の研究者たちによって、画期的な技術が次々と開発されたのです。

 多くの人は、この大成功はビルディング20が急造された建物だったにも関わらず起こったことと称えましたが、急造された建物だったからこそ起こったとは考えませんでした。

 しかし、当初、数年で取り壊される予定だったビルディング20は、諸事情によりそのまま何十年も使われ続けることになり、その後もさまざまな分野の研究者が集い、多くの研究成果や事業が生まれていったのです。

 その理由について著者は、「異色の集団のたまり場であり、さまざまな人たちが交錯しやすい場」であったことに加えて、「混沌とした放任主義の雰囲気」を挙げています。

 ビルディング20は不格好で古ぼけた建物だったため、どんな改造が施されようとも、大学側はまったく気にしていませんでした。そのため、研究者たちは設備に自由に手を加えられることができ、隣の部屋から電線を引くために自分の手で壁に穴を開けることさえ可能だったのです。

 建物の利用者たちが「自分たちには設備に自由に手を加える権限がある」と確信していたことが、ビルディング20の成功要因だと著者は分析しています。

 なぜなら、「人はスペースを自分の好きなように使える時に、最高のパフォーマンスを発揮する」からです。

 生産性を上げるためには、整然としているか、散らかっているかは問題ではなく、「好きなように空間を使えること」が何より大切なのです。

「ランダムなつながり」と「自律性」

 もう一つ、近年の創造的オフィスとして、ピクサーの例が挙げられています。ピクサーでは、トイレの数や位置を工夫したことで、社員同士の交流を活発化させることに成功しました。

 スティーブ・ジョブズは、「ランダムなつながりは大切だ」という信念から、ピクサー本社にトイレを一つだけしかつくらないというアイデアを持っていました。

 1日に数回、生理的欲求を満たすために社員が必ずロビーを通らなければならないようにすれば、社員同士の偶然の出会いを生み出すことができると考えたからです。

 しかし妊婦をはじめ多くの社員からの反対を受け、最終的には4つのトイレがつくられることになりました。

 幸い、正面玄関やカフェ、ゲームエリア、郵便受け、三つの劇場、会議室、試写室につながるアトリウムがあったおかげで、ジョブズが意図したような偶然の出会いが頻繁に起こることになった。

 社員同士が顔を合わす回数が増えたことが、ピクサーの創造性によい効果をもたらしたのは間違いありません。しかし著者は、ほかにも重要な要素があったといいます。それは、「自律性」です。

 何でも自分の思うままに物事を進めなければ気が済まないスティーブ・ジョブズを相手に立ち向かうことができた、そして自分たちの職場を快適にするアイデアを通すことができた。このように、社員たちが自分自身で職場環境を設計できるような自律性を持たせることが、創造性を発揮する上で大切なことなのです。

整然性よりも、大事なのは自律性である

 以上のことをまとめると、創造性は、必ずしも洗練されたオフィスやオシャレなインテリア、綺麗に整理されたデスクから生まれるわけではないということです。

 経営者は、整然としたオフィスや、おしゃれで遊び心のあるオフィスをつくりたいと考えがちだ。しかし、重要なのは整然さでも、強制されたつくられた遊び心でもなく、自律性だ。

 ビルディング20の例は、取り壊すことを前提に急設された建物だったからこそ、意図せず研究者たちの自由さが許容された例であり、ピクサーの例は、社員たちが自分自身で職場環境を設計しようという自律性を持っている集団だからこそ、高い創造性を発揮できていることの例と言えるでしょう。

 本書では他にも、様々なケースにおいて、無秩序が生み出す創造性について紹介されています。あのキング牧師の有名なスピーチ「I Have a Dream」も、アドリブの賜物だと著者はいいます。決して、入念に準備されたものではなく、その場の混沌を受け入れたからこそ生まれたスピーチなのです。

 著者は問いかけます。

 私たち現代人は、必要以上の整然さを求めるあまり、適度な無秩序を受け入れることがもたらすメリットを取り逃がしているのではないか。

 今後、混乱や乱雑に場面に出くわし焦ったときには、これはチャンスなんだ、と読み替えてみようと思います。

執筆者プロフィール

O.T.
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