大手への就職と起業どちらが正解?一橋大教授・楠木建の答えは?

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多くの若者が陥りがちな「勘違い」とは?

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 今月からスタートした「吉田ももみ起業物語」。ビジネス書の良書や著名人から学びを得ながら、「IT×教育」分野での起業をめざすリアルタイム成長ストーリー企画です。

 2冊目は、一橋大学大学院教授で経営学者の楠木建さん著『好きなようにしてください』。本書は経済・ビジネスの情報に特化したニュースキュレーション・サービス「NewsPicks」での連載企画「楠木教授のキャリア相談」をまとめた一冊です。

 相談者には大学生や若手社会人が多く、「大企業への就職とベンチャーへの就職(もしくは起業)はどちらがよいか?」「どうすれば最短距離で経営者になれるか?」といった、答えのない問いに答えを求める相談がとにかく多く寄せられています。

 こうした相談に「好きなようにしてください」と返しながら、楠木さんの仕事論について展開される本書は、仕事に対して若者が陥りがちな「勘違い」や「間違い」を的確に指摘し、物事の本質的な考え方について学ばせてくれる良書です。

 今回は、大学生や若手社会人にとって特に読んで欲しい、4つの悩みとそれに対する楠木さんの回答をまとめてご紹介します。

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1. 大企業とスタートアップで迷っています

 相談者は24歳の大学院生。第一志望の大企業に内定をもらっているものの、スタートアップ企業でアルバイトを始めたところ、仕事が面白くてすっかりハマってしまい、その会社からも就職しないかと誘われているため、どちらに就職すべきか悩んでいるという状況です。「大企業にも面白い仕事はあると思うけど、希望の部署に配属されないリスクがある」、とはいえ「いきなりスタートアップに入るのは自分の可能性を狭めるのではないか」と考えてしまい、どちらを選ぶべきか答えが出せずにいるようです。

 楠木さんは「好きなようにしてください」と答えた上で、この質問者の根本的な間違いを指摘します。

 それは、自分の仕事を考えるときに「仕事」ではなく「環境」を評価しようとしている点です。

 仕事を選択しようとしている以上、仕事の中身や自分にとっての仕事の意味合いといった仕事の内実が基準になるべきです。にも関わらず、この相談者は仕事を取り巻く環境に注目してベンチャーと大企業とどちらがいいかを比べている。

 つまり、よい環境に行けば半ば自動的によい結果が得られる、逆に悪い環境にいくとそれだけでマイナスになるという「環境決定論」で考えてしまっています。

 「環境決定論」がいかにアテにならないかは、「同じ環境にいるのに生き生きした人とそうではない人がいる」という現実に目を向けてみればすぐに分かります。

 大切なのは自分がどう行動するかであって、結果の良し悪しを左右するのは環境そのものではないのです。

 とはいえ、多くの学生にとっては、企業で働いた経験がないわけですから、仕事の内実で評価しろと言われてもどうしようもありません。「経験の量や質に限界がある若者ほど、環境決定論に流されやすいのはこのため」だと楠木さんは指摘します。

 これには根本的な解決策はないため、とりあえずは好きなようにするしかありません。相談者の場合は、ベンチャーでの仕事が楽しいという直接経験があるため、楠木さんはこの事実を大切にすることを勧めています。

 実際に働いてみたところ「面白くてハマってしまった」という直接経験があるベンチャーと、まだ働いたことがないけれど「何となく良いことがありそうだ」という推測にすぎない大企業とでは、そもそも比較対象としてニュートラルな選択肢になっていません。そう考えれば、前者の方が明らかに「面白い仕事ができる」確率が高いでしょう。

 もちろんこれは「いまのところ」の解であって、実際にスタートアップに就職してみたら「やっぱり違った」と感じる場合もあるかもしれません。そうしたら別のところに行けばいい。将来を先回りして考えて躊躇する必要はないというのが楠木さんの回答です。

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2. インドでプログラミングを学べば、自由人になれますか?

 続いては、人材系ベンチャーで働く28歳の女性。インドに行ってプログラミングをゼロから学ぼうか、今の仕事を続けようか悩んでいるという相談です。現職に不満はないものの、いまのままでは「場所に縛られずにどこでも働ける自由人になりたい」という理想が実現されそうにないので、国境を超えて使えるスキルとして、プログラミングを学んでみようかと考えているそうです。

 この相談者に対しても「好きなようにしてください」が結論になるのですが、楠木さんはさらに踏み込んで、仕事を選ぶ際の「キャリア・コンセプト」の重要性について説明します。

 「キャリア・コンセプト」とは仕事に対する価値観のようなもので、年収や職種のような具体的なスペックとは別に、「自分はどんな仕事をしたいのか」「どんな働き方をしたいのか」を突き詰めていくことで得られるものです。相談者にとっては「場所に縛られずにどこでも働ける自由人になりたい」がこれにあたります。

 相談者は、キャリア・コンセプトはあるものの、その具体化にうまくいっているかどうかは疑わしいというのが楠木さんの見解です。なぜならそのコンセプトを満たす仕事は世の中には多数あるはずなのに、なんとなくのイメージだけで「インドでプログラミングを学ぶ」という具体的な解に至っているように映るからです。

 解決策としては「場所に縛られない自由人」が本当のところ何を意味しているのか、「具体と抽象の往復運動」を通して自分のコンセプトに対する理解を深めることだと答えています。

 いきなり「自由」という抽象概念を持ち出しても何に役にも立ちません。まずは「場所に縛られない自由人」とは、具体的にどういうことなのか、どういう仕事があるのかと、コンセプトを具体的なレベルまで具象化していく必要があります。

 具体的なオプションが出てきても、すぐにどれかを選ぼうとしてはいけません。それらをじっくり眺めてみて、それぞれの共通点や相違点を見つけるようにします。すると、「自分にとって大切な『仕事の自由』というのは、要するにこういうことだな」という抽象化を進めることができます。

 そうしてつかんだキャリア・コンセプトだからこそ、今度は逆にそこから具体的な選択肢が引き出せるし、特定の仕事について自分の向き不向きを評価する基準としても使えるようになるといいます。

 要するに、具体ベタベタではダメだし、抽象だけでも絵空事。だから、「具体から引き上げた抽象をその都度直面する具体に下ろしていく」という、具体と抽象の往復運動が脳内基本動作として大切なのです。

 「起業家になりたい」「プログラマーになりたい」といった個別具体的な肩書に縛られて仕事を選ぶのではなく、「自由に働きたい」「とにかく大きな仕事がしたい」といった抽象的過ぎる思考で仕事を探すのでもない。具体と抽象の往復運動によって「キャリア・コンセプト」を磨き、そこから具体的な仕事の選択肢を引き出していくことが、ミスマッチのない仕事に就くために有効な手法です。




3.「プロ経営者」にはどうすれば最短距離でなれますか?

 都内の大学に通う22歳の男性は、日本や世界の偉大な起業家の本を読みあさり、彼らのような経営者になりたいと強く思うようになりました。「特にこれをしたい」という事業領域はないものの、とにかく経営者になりたいと思っている彼は、どのようなキャリアパスを歩むのが一番成功の確率が高いかを尋ねます。

 この質問に対して楠木さんは「愚問」とバッサリ。「しばらく好きなようにしていれば、そのうちにこういうヘンなことを考えなくなるのでご安心下さい」と返します。

 というのも、この若者は経営者になるために手っ取り早く、最小のコストで成功する「法則」や「方程式」を求めていますが、経営者という仕事は、事前に「成功の確率」をはじき出せるようなものではないからです。

 仕事とは、自分以外の誰かの役に立つということ。偉大な経営者として名を残している人は、すなわち自分以外の誰かに対して、大きな価値をつくったということです。
 
 ジョブズにせよザッカーバーグにせよ、「こういうサービスがあると世の中便利だよね」「これで世の中の問題を解決したい」という強烈な思いが先にあり、それを実現するために結果としてとった手段が起業であり経営だったわけで、経営者になることを目指してサービスを立ち上げたわけではありません。

 偉大な経営者たちの本を読んで「自分もそうなりたい」と思うのは健全な志ではあるけど、ただ「経営者になりたい」という自分の欲求を満たすことが先行しているうちは、仕事と趣味を履き違えていると楠木さんは指摘します。

 まずは「仕事とは何なのか」「自分以外の誰かの役に立つために自分には何ができるのか」を突き詰めて考えてみることが大切です。

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4、世界一のファッションブランドをつくるために足りないことは?

 最後は、アパレルの検品会社でアルバイトをしてる20代男性。将来世界一のファッションブランドをつくりたいという夢があり、立ち上げには何が足りないのかについて相談しています。コンセプトは「日本の文化からインスピレーションを受けた独自の衣服を提案する」こと。貯金額は30万円、アパレル学校卒で、アパレルでデザイナーを経験し、その後商社にて営業・企画・生産業務を経験したという細かな情報も付記されています。

 これに対して楠木さんは、「あらゆることが足りていないのがスタートアップの常なので、これを満たしたら成功するということはない」とした上で、相談者に何が足りないかといえば、「立ち上げていない」ということが足りないとしか言いようがないと返します。

 それ以外の具体的な情報、つまり「アパレルでデザイナーを経験、商社で営業・企画・生産業務を経験」などは、すべてビジネスの周辺部分のどうでもいい話だといいます。まだ20代では経験や実績はたかがしれてるし、お金も30万円だろうと300万円だろうと3億円だろうと、「世界一のブランド」をつくるには「足りない」ことに変わりはないからです。

 つまりどんなアイデアやリソースがあっても起業するのに「十分」とはならない以上、まず動いて立ち上げてみなければ何の判断もできないということです。

 また、「世界一のブランドをつくりたい」という夢については、もっと具体的な目標をもった方がよいとアドバイスしています。なぜなら、「世界一」という言葉は、「頑張ります」以上のことを言っておらず、ビジネス上の目標にはなり得ないからです。

 仕事の目標はキラキラした形容詞や副詞に頼らずに、もっとニュートラルな言葉でつづるべきだというのが僕の考えです。(中略)「世界一」というのはそれ自体があからさまに肯定的な価値を含んでいる。そういう言葉で夢を語るのは、「頑張ります」と言っているだけ。寝言と一緒です。

 例えばスターバックスは、「第三の場所(a third place)を提供する」という目標というかコンセプトがあったからこそ、今の成功があります。もし創業者のハワード・シュルツさんが「世界で一番いいカフェをつくるぞ」といって商売を始めていたら、ここまでの成功はなかったでしょう。

 「業界最高水準」とか「顧客満足ナンバーワン」という類のかけ声は、ビジネスの目標ではなく、自分の勝手な願望を表明しているだけだと楠木さんは指摘します。

 それを表明したとたんに、それが「何ではないか」がはっきりとわかる。ここに優れたコンセプトとか目標、ビジョンの特徴があります。何ではないかを定義することによって、その価値の独自性が明らかになります。(中略)スターバックスの「第三の場所」は、それが「第二の場所」でも「第一の場所」でもないということを表明している。ここに目標なりコンセプトを定義することの最大の意味があるのです。

 ビジネスを立ち上げる際には、ぜひとも心に留めておきたい視点です。

まとめ

 偉大な経営者の本を読んで刺激を受けた結果、起業することが「目的」になってしまったり、ビジネス書を読んだだけで仕事ができる気になったりする若者は、最近では「意識高い系」と揶揄される傾向にあります。
 
 若者はこうした「勘違い」に陥りやすいからこそ、その誤りを的確に指摘して本質的な物事の考え方を教えてくれる本書は、ぜひ手にとって読んでいただきたい良書です。

 この他にも「大手企業とアフリカ、どちらを選ぶべきですか?」「いますぐ起業すべきか、一年すべきか?」「ベンチャー勤務継続より大学への復学を選ぶべきですか?」「東大とスタンフォード、どちらに行くべきですか?」といった、個別具体的な相談に対する回答が計50件、掲載されています。

 同じ悩みを抱いている人は、そのまま具体的なアドバイスを得られますし、そうでない人も、楠木さんの仕事論に触れることで、自分の視野の狭さに気付かされると同時に、大きく道がひらける感覚を味わえるでしょう。

吉田ももみが「IT×教育」分野で起業する

 現役早稲田大学生で、在学中に「教育×IT」分野での起業を目指している吉田ももみさんが、ビジネス書の知識や起業家の先輩方へアドバイスを聞きに行ったり、書店さんとコラボしたフェア、著者さんとの対談企画などを通して目標の実現を目指します。

 今後、ももみさんのビジネスアイデアや悩みについて具体的にお伝えしていくので、ぜひコメント欄やTwitterで読者のみなさんのオススメ書について教えてください。

 採用された書籍は美女読書で紹介するとともに、ライブ配信もしくはミニ動画にてももみさんから感謝の言葉を述べさせていただきます。

ライター:渡邊
カメラマン:こば犬

モデルプロフィール

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・名前     :吉田ももみ
・生年月日   :1995.09.21
・出身     :大阪府
・職業     :大学生
将来の夢    :IT×教育分野で起業、東南アジアでアパレルブランドを立ち上げる
・Twitter   :@moo3oom_
・instagram  :@moo3oom_

ご協力いただいたお店

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・店名  :「café 1886 at Bosch」
・住所  :東京都渋谷区渋谷3-6-7
・TEL   :03-6427-3207
・営業時間:月-金: 8:00〜22:00
     (Morning 8:00 - 11:00)
     (Lunch 11:00 - 14:00)
     土: 11:00〜22:00
     日・祝: 11:00〜20:00
・定休日 :施設の休みに準ずる

おまけ

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