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- スマホやHDDレコーダーの浸透で、コンテンツの編集権が消費者にシフトした今、従来の広告やメディア戦略では人は動かせなくなっている。
- 一方的な情報発信で消費者をコントロールすることは諦め、一人の個人と個人として向き合い、心の通った「会話」を心掛けることが重要。
- その際「どれだけの人を動かせたら成功と言えるか?」を明確にして、各メディアの得意とするリーチ規模を見極めて使い分けよう。
お金をかければ人が動く時代はもう終わった。
ご存知のように、テレビCMや新聞のようなマスメディアに多額の広告宣伝費を投下して、できるだけたくさんの消費者に情報をリーチさせれば売上が上がるという時代は、とうに終わりを告げています。
いくらお金をかけて露出を増やしても簡単に人は動いてくれないことは、広告・メディア業界に関わる人たちは誰もが実感していることでしょう。
人を動かす方法が複雑化して頭を抱える人も多いでしょうが、こうした時代状況は、「多額の広告予算を持たず、これまでの既存マスコミに取り上げてもらいにくかった個人や小さな企業」にとっては大きなチャンスとも言えます。
「予算はなくともヤル気とセンスで、より大きな市場に打ってでよう!」というチームや個人にエールを送り、前向きな兆しと具体的な指針を示してくれるのが本書、『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』です。
LINE、livedoorニュース、R25など数々のメディアビジネスの立ち上げ・運営に携わる田端さんと、「戦略PR」という新たなPR手法を日本に広めた本田さんとの共著は、メディアに関わる全ての人たちが目を通すべき必読書です。
広告だけでは人を動かせなくなった理由
タイトルが挑戦的なだけに、「広告で人を動かすのはあきらめろと言っておきながら、LINEだって広告してるじゃないか」と異議を唱えたい方もいるかもしれません。
本書のタイトルは、「(これまでのように)広告やメディア(だけ)で(たくさんの)人を動かそうとするのはもうあきらめなさい」という意味でして、「広告では一切人を動かせない時代になった」といっているわけではありません。
なぜ、広告やメディア「だけ」では、多くの人を動かすことができなくなってしまったのでしょうか。
それは、インターネットやスマホの浸透により、消費者が「あらゆるコンテンツを好きな部分だけ好きなときに楽しむ自由」を手に入れてしまったからです。
新聞の気になる記事だけをWebで読んだり、HDDレコーダーで録画再生するように、「コンテンツの編集権や編成権」は、送り手側から受け手側へとシフトし、従来のように「マス広告で強制的に多くの生活者へメッセージを伝えて人を動かす」という力技は、もはや通用しなくなっているのです。
インターネットやスマートフォンの出現自体は表面的な現象に過ぎない。最も重要なことは、そういったテクノロジーがメディア環境の前提条件を大きく変え、一般ユーザーにメディア空間上の「編集権」「編成権」を移行させてしまった、ということだ。
「演説」よりも「会話」を心がけよう!
メディア環境が大きく変わった今、どうすれば消費者に動いてもらうことができるのでしょうか。
本書では、現在のメディア環境を選挙運動にたとえ、「候補者(企業)」は、「有権者(生活者・消費者)」に対し、「選挙カー(メディア)」の上で、ただ自社の商品やブランドについて「演説」をするのではなく「会話」をすべきだと説いています。
現代のメディア環境は、選挙期間中といえども、街を歩く聴衆がみな、スマホで好きなコンテンツを眺め、耳にはイヤフォンをさしているような状況である。ただ駅前に選挙カーを乗りつけて演説するだけでは、話を聞いてもらうことすらできない時代がやってきてしまったともいえるのだ。
自分の言いたいことを一方的に「演説」するのではなく、「一人の個人と個人」として生活者と向き合い、心の通った「会話」を心掛けて初めて、こちらの話に耳を傾けてもらえるようになります。
リーチさせたい規模によってメディアを使い分けよう!
もう一つ重要なのは、「そもそもリーチすべき消費者や生活者は何人なのか?」を明確にすることです。
メディアには、テレビであれば数千万人、新聞なら数百万人、検索連動型広告は数百〜数万人単位のように、それぞれに適したリーチのスケールがあります。
「できるだけたくさんの消費者に、たくさんのメディアを通じて、自社のメッセージをリーチさせたい」という漠然とした発想では、費用対効果を高めることはできません。
まずは「何人に、自社の製品やサービスに関する情報を知ってもらう必要があるのか? そして、その必要規模のリーチを得るにはどうすればいいのか?」を考え、各メディアが得意とするリーチ規模を見極めて、メディア戦略を練ることが重要です。
本書ではこの点を「ゴルフクラブ」に例え、検索連動型広告のように「ターゲティング精度は高いがスケールの小さいメディア」をパター、テレビCMのように「リーチを稼げるが、精度は悪いメディア」をドライバーと表現しています。
自分は、今、ピンまで何ヤードの地点にいて具体的に握るべきクラブ(=使うべきメディア)は何なのか? 目標達成のためには、具体的に、どのようなアプローチで迫っていくのか? といったことを、具体的な行動レベルの計画に落とし込んで転換していくことが必要である。
この視点は、これまでの広告・メディア関連書籍ではあまり触れられてこなかったことだけに、必ず押さえておくべき重要なポイントと言えます。
「選挙演説」にせよ「ゴルフクラブ」にせよ、田端さんのたとえが秀逸でわかりやすいのも本書の魅力です。
「1000人」を動かすには何が必要?
本書では、1000人、1万人、100万人、1億人、10億人のスケールに分け、それぞれの規模の人数を動かすためのポイントについて解説されています。
例えば、当サイトの最初の目標でもある「1000人」を動かすポイントは次の3つです。
- ピュアな理想に裏打ちされている。
- 少ない参画者で大きなことを成し遂げるというレバレッジが効いてる。
- 達成すべきミッションがシンプルでわかりやすい。
ここでは、著作権の保護期間が過ぎた作品をインターネット上で公開する「青空文庫」では、800人のボランティアが参加して自ら選んだ本を手作業でデジタル化しているという事例や、プリン約4,000個を誤発注した京都教育大学生協を助けるため、学生がツイッターで購買を呼びかけた結果、即日完売した事例が紹介されています。
これらは、上記3つのポイントを見事に満たしているのが分かるでしょう。
「ピュアな理想」というのが難しいところで、その裏に不純な動機や意図が透けて見えると、人はピタっと動かなくなります。それどころか炎上の原因にもなり得ます。
実際、上記のプリン誤発注事件は、その後も似たようなケースが連続して起こったため「誤発注商法」と揶揄する声も上がりました。
そもそもコミュニケーションにおいてはコントロールできない部分があることを受け入れた上で、上記ポイントを念頭に「”遊び”をもって全体をコントロール」する姿勢をもちましょう。
まとめ
本書後半では、人が動きはじめるときの「ココロの沸点」、つまり「人は心にどんな刺激を受けたときに動きはじめるのか、その刺激はどのように与えていけばいいのか」についても、人数のスケールごとに解説されています。
広告やメディアだけでは人が動かない今、人が動くときのポイントを豊富な事例を元に考察してくれる本書は、個人ブロガーから大企業のマーケティング担当者まで、メディアに関わる人すべてにオススメしたい良書です。
合わせて読みたい
本田さんの著書。広告枠を購入して商品の魅力を「宣伝」するのではなく、マスコミ報道やネットのクチコミを巻き込んで、その商品が必要とされる「空気づくり」をするためのコミュニケーション法を学べる。これもメディア関係者必読の一冊。
田端さんの著書。メディアとはそもそも何か、メディア運営者はどうあるべきかについて本質的な視点で説かれた良書。下記記事で紹介済。
>個人がWebメディアで稼ぐために押さえておきたい基本心得3つ!
モデルプロフィール
・名前 :Sophie
・生年月日 :1992.5.14
・出身 :東京都
・職業 :大学生
・将来の夢 :日本語、英語、フランス語のトリリンガル♡
・ブログ :「Life Tastes Good」
撮影にご協力いただいたお店
店名 :ダブルトールカフェ 渋谷店
住所 :東京都渋谷区渋谷3-12-24 渋谷イーストサイドビル2F
TEL :03-5467-4567
営業時間:月〜金 11:00~23:00
土 11:30~21:00
定休日 :日、祝
店長さんを筆頭に気さくな店員さんばかりで、即撮影ご快諾下さいました。ランチタイムは一気に混雑する人気ぶりで、料理もボリュームがあって美味しかったです!